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【レポート】『相棒』はなぜ国民的ドラマになったのか? 本当にスゴイ陰の理由

まさに21世紀を代表する日本の国民的ドラマだ。先日まで放送された『相棒season12』は平均視聴率17.4%を獲得し、冬ドラマ第2位の『S-最後の警官-』同14.2%や、散々世間の話題をさらった『明日、ママがいない』同12.8%を大きく引き離す圧勝劇。

さらに4月26日公開の『相棒-劇場版III』を控え、それに先駆けた『序章』の動画配信サービスにトライするなど、ますます深く新しく進化を遂げようとしている。ここまで支持を集める良作であり、さまざまな場で称賛されているだけに、今さらストーリーや各キャラクターの魅力を語るまでもないだろう。今回はドラマ評論家の目線からそれ以外の魅力を挙げていく。

主演の水谷豊(左)と3代目相棒を務める成宮寛貴

脚本家の大量起用と静かなバトル

『相棒』ファンが最も支持しているのは、脚本の面白さで間違いない。通常の刑事ドラマフォーマットとは一線を画す、"濃密な1話1時間"の姿勢が評価されている。

その秘密は、2時間ドラマ時代から執筆している輿水泰弘をはじめ、毎シリーズ大量の脚本家を起用していること。『season1』は3人でスタートしたが、『season4』では10人に、最新シリーズ『season12』でも9人を起用するなど述べ30人を超え、1本のクオリティを上げるべく「一部の脚本家に頼らない」「渾身のエピソードだけを厳選する」方針を貫いている。

当然、仲間である以上にライバル関係となる脚本家たちは、お互いを意識し合い切磋琢磨するしかない。それが時勢に合う題材を扱い、タブーギリギリのラインまで攻めることにつながっている。だからこそ、各話の導入部分も、事件解決への道筋も、警察内外の人間関係も、犯人像も、さまざまな視点や価値観から描かれているのだ。

ちなみに、「今最もオファーの多い脚本家」と言われる古沢良太も2005年から執筆し、多忙になった今でも毎シリーズ1話ずつ書き下ろしている。また、メイン級の櫻井武晴と戸田山雅司は、同じテレビ朝日の人気シリーズ『科捜研の女』も担当。こちらでもライバル関係にあるなど、良質な刑事ドラマを書く土壌は盤石だ。ゆえに、視聴習慣がある人だけでなく、「初めて見ても面白い」「久々に見ても面白い」作品になるのだろう。

軽い演技はご法度。邪魔が入らない

"相棒"の2人はさておき、それ以外のレギュラー俳優は、失礼ながら総じて地味。いわゆる人気俳優やアイドル、芸人、あるいはバラエティーに出まくるような俳優はいない。水谷豊の技量やストイックな姿勢についてこられる人しか使わないのだ。

その象徴が"トリオ・ザ・捜一"の川原和久、大谷亮介、山中崇史。さらに、角田六郎役の山西惇、米沢守役の六角精児など、小劇場の役者がズラリ並ぶ。いずれも連ドラへのレギュラー出演が少なく、売れっ子俳優とは言えなかったが、『相棒』出演でメジャーになった。

小劇場の役者で知名度が低いからこそ、視聴者は各キャラクターのイメージづけがしやすく、感情移入もしやすい。さらに、距離感の近い観客に鍛えられているため、長回しにも耐えられる技量を持ち合わせている。『半沢直樹』のヒットで舞台出身俳優が脚光を浴びているが、その『相棒』は先駆けなのだ。

そのスタンスは、2000年のスタートから右肩上がりで視聴率が上がっても不変。浮ついたところはなく、「人気者に頼るという発想がない。杉下右京の相棒も決して"視聴率を持っている俳優"ではなく、その世界観を邪魔せず、水谷豊との化学反応を考慮して選ばれている。

日本一の放送時間と視聴習慣

最も分かりやすい魅力は、放送時間と回数の多さ。「テレビをつければ毎日見られる」という安心感や親近感は、「接触するほど愛着が生まれる」という人間心理にかなっている。もちろんそれを実現しているのは、制作サイドの努力。特筆すべきは、目下11年連続2クールぶち抜き放送していること。つまり「一年の半分は新作が放送されているのだ。

また、その放送は毎年10~3月に固定され、元旦には9年連続でスペシャルドラマを放送、さらに夕方の『相棒セレクション』(再放送)など、放送月や時間の固定で安定した視聴習慣につなげている。かつては『水戸黄門』や『サザエさん』が1日2回地上波放送されていたが、現在では『相棒』が唯一。「日本で最もたくさん見られるドラマ」として視聴者と相思相愛の関係を築いている。

同様に視聴習慣を意識して毎日放送されているNHKの朝ドラは、「1話見逃しても問題ない」というコンセプトで作られているが、それは『相棒』も同じ。もし何話か見逃したとしても視聴習慣は揺るがず、信頼も失わず。だからちょっとのことでは視聴率が落ちない。

ただ、どんな名作でもこれほどの長期シリーズになると、視聴者の評価が分かれる放送回がある。過去シリーズとの比較から、少し満足できないと「『相棒』がおかしい」「どうした『相棒』!」という声があがるのだ。しかし、そんな声こそ視聴者の思い入れと期待の証。良い意味で「面白くない放送回があったとしても、それでも次回を見る」と受け入れられた境地に達している。

スマホ画面から巨大スクリーンへ

大盛り上がりの中、3月19日に『season12』の放送は終わった。毎年この時期になると『相棒』ファンは、心にぽっかり穴があいたような心境になるのだが、今年はそんなことがない。『相棒 -劇場版III-』が4月26日から公開されるほか、そのプロローグとなる『相棒 -劇場版III-序章』が動画配信されるからだ。

約3年半ぶりとなる『相棒 -劇場版III-』のキャッチコピーは、「相棒史上、最高密度のミステリー。舞台は東京ではなく「絶海の孤島、さらに「謎の隠蔽組織」「通信手段断絶」「パンデミック」「国家権力の暴走」などの刺激的なキーワードが並ぶ。予告編を見てもらえれば分かるが、ファンはジャングルを駆ける杉下右京の姿を見ただけで心が躍るだろう。また、2代目相棒の神戸尊(及川光博)が再登場し、甲斐享(成宮寛貴)との新旧相棒が共演するのも興味深い。

一方、『相棒 -劇場版III-序章』は、劇場版につながる事件を描いたオリジナルストーリー。貨物船内で起きた「あまりに切ない」密室殺人事件の解決が描かれている。杉下右京をはじめとするレギュラーキャストはもちろん、制作スタッフも全員集合。中でもドラマ版や劇場版では見られない"トリオ・ザ・捜一"の勇姿が見られるのがうれしい。配信は「dビデオ powered by BeeTVで3月29日から毎週土曜に全4話。

いち早く両作品を見させてもらって感じたのは、魅せ方のうまさ。動画は小さなスマホ画面で楽しみやすい人間ドラマを描き、劇場版は巨大スクリーンを生かすべく自然を生かした大スケールの映像で見せている。その両作品が1つの点でつながるのも興味深いし、「ドラマ→動画→映画」と間髪入れずにつなげる意欲的な試みにも拍手を送りたい。

『相棒』は、常にファンの予想や期待を上回り、飽きさせない工夫を重ねてきたが、今回もそれは変わらない。両作品とも映像を見るだけで、撮影現場の緊張感や熱気が伝わってくるようだった。また、「初めて見る人も違和感なく楽しめる」という配慮も健在だけに、誰を連れて行っても、誰と一緒に見ても問題なし。気軽に動画を、意気込んで映画を楽しんでほしいと思う。

■木村隆志
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ評論家、タレントインタビュアー。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴する重度のウォッチャー。雑誌やウェブにコラムを提供するほか、取材歴1000人超のタレント専門インタビュアーでもある。著書は『トップ・インタビュアーの聴き技84』など。

(C)テレビ朝日/東映

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コメント

No title
テレビ朝日が本腰入れ始めてからどんどんつまらなくなってるんですけど。
細々とマイナー扱いされてる頃が全盛期

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